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50人未満でも他人事じゃない!ストレスチェック義務化で変わる企業のリスク管理

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2025.11.10

2025年5月14日、改正労働安全衛生法が公布され、50人未満の中小企業にも「ストレスチェック制度」が義務化されることになりました。施行日はまだ明確ではありませんが、「公布後3年以内」とされています。職場のメンタルヘルス対策が重要視される中、もう中小企業も他人事ではありません。情報収集と対策が必要になっています。本記事ではストレスチェック義務化の背景や最新動向、50人未満企業が今から取るべき準備、そしてリスク管理の視点から実務対応をわかりやすく解説します。

1.ストレスチェック義務化の背景と目的

1-1 なぜストレスチェックが必要なのか



現代の職場では、長時間労働や人間関係のストレスにより、メンタル不調を訴える従業員が増加しています。2024年労働安全衛生調査によると、労働者の68.3%が仕事に強い不安やストレスを感じていると回答。特に30代、40代が顕著に表れています。こうした状況を受け、企業には「従業員の心の健康を守る」体制整備が求められるようになりました。ストレスチェック制度は、その第一歩として従業員のストレス状態を定期的に把握し、早期対応につなげる仕組みです。

1-2 義務化の目的と法的根拠

ストレスチェック制度は、2015年12月に施行された労働安全衛生法の改正によって導入されました。制度の目的は「メンタルヘルス不調の予防」であり、産業医などの専門家による評価・助言を通じて、職場環境の改善を促すことにあります。2025年の改正法公布により、「常時50人以上の労働者を使用する事業場」への拡大が決まりましたが、事業場の負担を考慮し3年の猶予期間が置かれています。

2.50人未満企業にも義務化された理由

2-1 中小企業でのメンタル不調の増加

従業員数が少ない事業場では、個々の負担が大きく、上司や同僚との関係が密接な分、ストレスを抱えやすい傾向があります。特にコロナ禍以降は、業務の多様化・人手不足・経営不安などが重なり、メンタル不調による離職や休職が増加。これが中小企業の人材確保にも影響しており、厚労省は小規模事業場でのメンタル対策強化を重視しています。

2-2 ストレスの要因は?



もう少し、令和6年の労働安全衛生調査を見てみましょう。ストレスの要因となる主な3つを上げてもらうと、全体で①仕事の失敗、責任の発生等②会社の将来性③顧客、取引先等からのクレームの順で多くなっています。ただ、世代によっても、かなり異なることが分かります。小規模事業所でも同様のことが言えるでしょう。ストレスチェック義務化の前から準備を始めておくことで、スムーズな導入と従業員の信頼確保が可能になります。

3.ストレスチェック義務化で企業に求められる対応

3-1 制度導入に必要な体制づくり

ストレスチェックを実施するには、まず実施者(医師・保健師など)と実施事務従事者を選任し、個人情報保護体制を整えることが必要です。次に、対象者への通知・同意取得、検査票の配布・回収、集団分析などのプロセスを明確化します。50人未満企業では、社外専門機関への委託を活用することで、負担を大幅に軽減できます。

3-2 実施時のポイントと注意点

重要なのは、結果を個人評価に使わないことです。ストレスチェックは「評価」ではなく「支援」のための制度であり、従業員の安心感がなければ本来の効果が発揮されません。また、集団分析結果をもとに職場環境を改善することが、企業の信頼性向上につながります。小規模事業所の場合、1人1人のプライバシーをどのように保護していくのか、制度設計をする中で大きな課題となります。

4.ストレスチェック導入によるメリットとリスク回避

4-1 従業員の健康維持と生産性向上

ストレスチェックを通じて従業員のメンタル状態を可視化することで、早期支援が可能になります。職場のストレス要因を減らすことで、離職率の低下・生産性の向上・職場のエンゲージメント改善が期待できます。小規模企業こそ、社員一人ひとりの健康が経営を左右するため、この取り組みが大きな経営メリットになります。

4-2 放置した場合の企業リスクと罰則

メンタル不調への対応を怠った場合、労災認定や損害賠償リスクが生じることがあります。義務化後に未実施だった場合は行政指導の対象になる可能性もあります。制度導入はコストではなく、「企業リスクを最小限に抑える投資」として考えることが重要です。

5.50人未満企業が今からできる準備と支援策

5-1 実施手順と外部機関の活用法

まずは、ストレスチェックの実施フローを理解することから始めましょう。
(1)実施者の選任 → (2)質問票の配布 → (3)結果の通知 → (4)高ストレス者への面談 → (5)職場環境改善、という流れです。
厚生労働省の「ストレスチェック制度 簡単! 導入マニュアル」が参考になります。今後、施行に向け資料が出されることになるでしょう。また、自社内で難しい場合は、社労士事務所を活用することもご検討されてはどうでしょうか。

5-2 今から準備し、安心な体制を

ストレスチェックの運用には、法令遵守と従業員対応の両立が求められます。50人未満事業場への義務化が本格化する前から準備することがリスク管理の鍵となるでしょう。

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